『魂うた』というワークショップのこと(番外編)〜エピソード・ゼロ

固唾をのんで見守る僕たちのずっと上のほう。
B’zの稲葉さんがセットのてっぺんから飛び降りた時、僕は18歳だった。
1995年のことだ。

このとき演奏されていた曲は『LOVE PHANTOM』。
言わずと知れたB’zの代表曲で
その後180万枚以上売れる大ヒットシングルになるのだけれど、
この『BUZZ!!』というライブで初披露されたばかりだった。

歌を聴いて「震える」という思い出をたどるとき、
僕はいつもこの時のヴァンパイアの姿をした稲葉さんを思い出す。

“会いたくて会いたくて震える”と歌ったアーティストもいたけれど、
たぶん僕たちは最上級のものに出会ったときに
震えてしまう生き物なのだと思う。

そして、このときの稲葉さんは
「カッコいい」の最上級だった。

その後も僕は人生のいろんな場面で震えてきた。

ミスチルやサザンの出す曲ごとに震えて泣いていたこともあったし、
ディズニーランドのパレードに震えて立ち尽くしたことも、
本の一節に震えて赤いペンで何度も線を引いたこともあった。

思えば僕は「震えるような経験」をずっと求めてきたんだと思う。

なにしろ、ディズニーランドのパレードに震えたことがきっかけで、
その後就職してしまったくらいだから。

けれど、歳を重ねるにつれて飽きてきたのか、
自分が新鮮な冒険をしなくなったせいか、
だんだんと震えることは少なくなっていった。
特に音楽では。

カラオケに行けば楽しいし、
次々にリリースされる新曲もそれなりにいい。

そのときには「ぶるっ」と来る感じもある。

でも、あの空の向こうまで突き抜けるような感じには、
なかなかなれなかった。

そうして音楽が日常を華やがせる道具の
一つの過ぎないんだと思うようになった。

なぜ、ディズニーランドに勤めていたのに辞めたんですか?
と聞かれることがある。

たくさんの理由があったように思うけれど、
あんなにいい会社を辞めさせた一番の動機は
「震える経験を取り戻したかったから」という
非合理的な理由だった気がする。

2013年4月、『魂うた』に出会ったとき、
「これだ」と思ったのは、たぶんその震えがあったからだ。

誰の歌を聴いても泣けて仕方がなかったのは、
大事なものをやっと取り戻した喜びもあったと思う。

人生の途上において、自分が大事にしているものを
見失わずにいられるのは幸せなことだ。

そして、僕はまだまだ震えたいと言っている、
自分の内側にある衝動にこれからも付いていきたいと思う。

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