理想的な音楽の学びかた。

「ギター弾けるひとー」

と言って、児童館の受付に
中三の女の子二人組が
やって来たのは、おとといのことだ。

「はいよ」と手をあげ、付いていくと、
ギターを教えてほしいという。
いまは、まったく弾けないらしい。

「好きなアーティストは?」と聞くと「miwa」。
よく知らないので、いっしょに
彼女たちのお気に入りの曲をYouTubeで聞く。

いつも弾き語りに使っている
「楽器me」で、その曲を検索すると
案外簡単だとわかった。

そこで、サビの部分の
「G」「Em」「C」の
コードを教えることにした。

ギターの楽譜には、
五線ならぬ六本の線の上に
● が書かれた図がある。

「ダイアグラム」という
この図の見方から、
即席のギター教室がはじまった。

図を見たり、
僕が指で示す弦の位置を確かめながら、
懸命にコードを押さえる彼女たち。

最初は音が鳴るか鳴らないかだったけれど、
要領をつかむとすぐに
コードチェンジができるようになった。

「miwaみたい!」
と喜んだ彼女たちは、

その後、四時間にわたって
「G」と「Em」 と「C」を
繰り返し弾いていた。

それから二日後、つまり今日。

彼女たちは、歌っていた。

「G」「Em」「C」のコードに乗せて、
弾き語りをしていたのだ。

しかも、
途中に休止(ブレイク)を入れるなど、
アレンジまで加えている。
これには、さすがに驚いた。

それだけではない。

お兄さんに教わったという
「miwa」のもっと弾くのが
簡単な曲を持参していた。

細かいことに目をつぶれば
「G」「Em7」「CM7」「D6」
だけ覚えれば、
曲全体をカバーできる曲だった。

いける。

そう思った僕は、
その四つのコードを彼女たちに教えた。

最初は「無理ー。できないー」
などと言っていた二人だったが、
簡単だと気づくとがぜん勢いづいた。

しばらく弾いているうちに
コードチェンジにも慣れ、
「弾ける!」と分かると
目が輝いてくる
(たとえでなく本当に輝くのだ)。

それから、約二時間後。

彼女たちは
覚えたてのコードに合わせて、
歌っていた。

一曲通して演奏できた
手応えを感じて
「ウチらすごい!天才かも!」
とはしゃいでいる。

そして
「誰かに聞かせたい!」
と人を呼び、弾いて、

ついには児童館で行われる
イベントに出よう!と言い出した。

僕は自分がライブに出るまでに、
38年要した男だ。

神をも恐れぬ中学生たちに、
あっという間に
追い抜かれてしまったわけだ。

と、小説風に書いてみましたが、
先週、実際に起きたことです。

こんにちは。
㐧二音楽室の澤です。

おととい昨日
「歌をうたう場所」について
例を挙げましたが、その中に
書かなかったことがあります。

それは
「他の人と音を出すこと」と
「バンドを組むこと」。

書かなかったのは、
僕自身
やったことがなかったからです。

ですが、目の前で
それが起こるのを目の当たりにして、
こんなにも早く上達し、
アレンジまでするのを見て
「これほど効果があるのか!」
と驚愕しました。

それは僕が理想とする
音楽の学びかたでした。

すごく努力してるけれど
「遊び」で、
大変で、楽しくて、
友達や仲間と騒ぎながら
夢中でやっているうちに、
どんどん上達していく。

教えている僕もすごく楽しくて、
とても充実した時間を過ごしました。

彼女たち、明日も来るそうです。
イベント出演は、一ヶ月後。

いまは「弾けないところを弾いて」
と言われていますが、
たぶん当日までに
全部弾けるように
なっちゃうんだろうなぁ。

あんなに夢中に、
あんなに楽しそうに努力している。

「気づいてないだろうけど、
 それ、すっげえことなんだぜ」
と心の中で思っていた今日でした。

㐧二音楽室 澤 祐典 拝
(もしなにか響くところがあったら
 コメントをもらえるとうれしいです。)

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